未成工事受入金・未成工事支出金とは? 建設業会計を解説
匠税理士事務所HPへご訪問ありがとうございます。
建設業支援を担当する税理士の水野です。
【 未成工事受入金と未成工事支出金について 】 【 建設業の経理担当者向けに説明してほしい。 】というご要望を頂きましたので、
今回はこちらについて取り上げます。
未成工事受入金と未成工事支出金とは
建設業や建築業では、一般的な商品販売業と異なり、
契約から完成・引渡しまで【 長期間 】かかります。
例えば、住宅、店舗内装工事、公共工事、土木工事、
マンション改修工事などは、契約をしてから
すぐに売上が確定するわけではありません。
契約後、材料の仕入れをして、外注業者へ発注して、
職人が現場で作業し、数か月後に完成・引渡しの後、
ようやく【工事完了=売上計上】する事になります。
このように、建設業や建築業では「工事が完成していない準備の段階」で
お金の入金や支払いが発生するため、
通常の売上経費と区別した会計処理が必要です。
その代表的な勘定科目が、
【1】未成工事受入金
【2】未成工事支出金 です。
この2つは建設業会計で非常に重要な科目です。
なぜなら、正しく経理処理できていないと、
売上・利益・税金・決算内容が変わってしまうため
【1】未成工事受入金
【2】未成工事支出金
これらは【 建設業会計の核 】とも言えます。
未成工事受入金とは何か?会計経理の処理は
未成工事受入金とは、未完成の工事について、
【 発注者から先に受け取ったお金 】のことです。
建設業は、工事代金を完成後に一括で受け取るとは限らないという特徴がある業種です。
契約時に工事代金の一部を着手金で受け取ったり、
工事の進み具合に応じて、中間金を受け取ることが
一般的な慣習の業種です。
たとえば、1,000万円の工事を受注し、
契約時に300万円の着手金を受け取ったとします。
しかし、その時点ではまだ工事は完成していません。
300万円は、まだ売上として確定したものでなく、
将来工事を完成させる義務に対応するお金です。
そのため、この段階では「完成工事高」ではなく、
未成工事受入金として処理します。
仕訳例は次のようになります。
【 着手金300万を普通預金に入金した場合 】
借方:普通預金300万/貸方:未成工事受入金300万
この処理により、入金はあったものの、
まだ売上計上しないという会計処理になります。未成工事受入金は、試算表や決算書における
貸借対照表で【 負債 】で表示されます。
これは、発注者からお金を受け取っており、
まだ工事を完成させる義務を負っているからです。
つまり、未成工事受入金は「前受金」に近い性格を持つ勘定科目という事もできます。
未成工事受入金を売上に振り替える会計処理
未成工事受入金は、工事完成時に完成工事高、
つまり売上へ振り替えの会計処理をします。
たとえば、先ほどの1,000万円の工事について、
着手金300万を未成工事受入金で処理した場合、
工事が完成し引渡しが完了時点で、売上計上します。
【 工事完成時の仕訳例 】
借方:未成工事受入金300万/貸方:完成工事高300万
借方:工事未収入金700万 /貸方:完成工事高700万
この仕訳により、すでに受け取っていた300万円と、
まだ入金されていない700万円を合わせて、
工事全体の売上1,000万円を計上します。
ここで重要なのは、入金時点で売上するのではなく、
工事の完成・引渡しの時点で売上にする点です。入金基準で売上を計上してしまうと、
まだ完成していない工事売上が先に立つため、
実際の利益状況が正しく表示されません。
未成工事支出金とは何か?会計経理の処理は
未成工事支出金とは、未完成工事について
発生した材料費、外注費、労務費、経費などの原価を【 一時的に集計する勘定科目 】です。
建設業では、工事が完成する前から長期にかけて
下記のような様々な支出が発生します。
たとえば、
【1】材料の購入費
【2】外注業者への支払い
【3】現場作業員の労務費
【4】重機や機械の使用料
【5】現場までの交通費
【6】工事に直接関係する消耗品費 などです。
しかし、工事がまだ完成していない段階では、
これらをすぐに「 完成工事原価 」として
費用で経理処理をするのではなく、
いったん未成工事支出金で資産計上します。仕訳例は次のようになります。
【 未完成工事の材料費100万を支払った場合 】借方:未成工事支出金100万 / 貸方:普通預金100万
【 未完成工事の外注費200万を支払った場合 】
借方:未成工事支出金200万 / 貸方:普通預金 200万
このように、未完成の工事にかかった原価は、
完成まで費用でなく未成工事支出金で処理します。
未成工事支出金は、試算表や決算書においては、
貸借対照表では【 資産 】で表示されます。
なぜなら、まだ売上計上してない将来の工事原価で、
完成後に売上と対応させ費用化すべきだからです。
未成工事支出金は、一般事業でいうと、
在庫である【 棚卸資産 】に近い性格があります。
未成工事支出金を原価に振り替える時期
未成工事支出金は、工事が完成した時点で
【 完成工事原価 】に振り替え処理をします。
たとえば、ある工事について、完成までに
材料費・外注費・労務費など計700万の原価が生じ、
【 未成工事支出金 】にて処理していたとします。
工事が完成した時点で、次の経理仕訳を行います。
【 工事完成時の仕訳例 】
借:完成工事原価700万/貸:未成工事支出金700万
これにより、完成した工事の売上と、
対応する原価が同じ会計期間に計上されます。
これを会計では費用収益対応の原則といいます。
建設業で正しい利益を把握するためには、
売上と原価を対応させることが非常に重要です。
もし、未完成工事の原価をすぐ費用処理すると、
工事が完成していない期に費用だけ先行計上され、
利益が過小になり、税額が圧縮されますが、
税務調査の指摘で罰金分の税額が追徴されます。一方で、翌期に工事が完成した際には
売上だけが計上され、利益が過大になります。
この場合、金融機関等の融資を受けていれば、
粉飾決算とみなされるリスクが生じてきます。未成工事支出金を適切に集計・処理しないと
これらの年度ごとの利益が大きくブレてしまい、
正しい経営判断や税務申告ができなくなります。
未成工事受入金と未成工事支出金の違いとは
【 未成工事受入金 】と【 未成工事支出金 】は、
会計上の勘定科目名が似ていますが、
両社の性格と内容は、まったく異なります。
未成工事受入金は、未完成工事につき先に受け取ったお金で
将来工事を完成させる義務があるため、
試算表や決算書で、【 負債 】にて扱います。
一方、未成工事支出金は、上記で説明した通り、
未完成工事にかかった原価であり、
完成時売上対応させ費用化する資産とします。
簡単にまとめると、
未成工事受入金=完成前に受領した代金=【負債】未成工事支出金=完成前に使用した原価=【資産】
という内容となり、両社は対応する関係です。
たとえば、まだ完成していない工事について、
発注者から500万円の入金があり、
材料費や外注費で300万を支払っている場合、
決算書上は次のようになります。
未成工事受入金 500万円:負債
未成工事支出金 300万円:資産
この段階では、まだ工事が完成していないため、
原則、完成工事高や完成工事原価に計上しません。
決算や税務申告時に注意すべきポイント
建設業の決算で特に重要なのが、
【 期末時点で未完成工事の正しい整理 】です。
決算日時点で工事が完成していない場合には、
入金や支出を完成工事高・完成工事原価にせず、
未成工事受入金・未成工事支出金で処理します。
そのため、決算時には次の確認が重要です。
【1】どの工事が完成しているか
【2】どの工事が未完成か
【3】未完成工事ごとの入金額はいくらか
【4】未完成工事の原価はいくらか
【5】完成工事原価が未成工事支出金にないか
【6】未完成工事の売上を誤って計上してないか
特に中小建設業では、入金ベースで処理してしまい、
未成工事受入金や未成工事支出金の整理が不足し
リスクが残る税務申告になるケースがあります。
これらの会計処理を誤ると利益が大きく変わり、
税額の計算に大きく影響してきます。
たとえば、未完成工事の入金を売上にしてしまうと、
その期の売上と利益が、【過大】になります。
逆に、未完成工事の原価を全て費用にしてしまうと、
その期の利益が【過小】になります。
税務署や国税局が行う税務調査では、
未成工事受入金・未成工事支出金の処理は
必ず重点的に確認されるポイントです。
なぜなら、建設業は一取引当たりの金額が大きく
税務調査で指摘を受けてしまうと、
追徴税額など罰金も大きいからです。
工事台帳で原価・利益の管理が重要
未成工事受入金・未成工事支出金の正しい処理には、
工事ごとの状況管理が欠かせません。
そのために重要なのが工事台帳です。
工事台帳とは、工事ごとに契約金額、入金額、材料費、外注費、労務費、経費、粗利益を管理する帳簿です。
工事台帳が整備されていれば、
決算時に次のような判断がしやすくなります。
【1】この工事は完成済みか
【2】この工事は未完成か
【3】この工事にいくら入金されているか
【4】この工事にいくら原価がかかっているか
【5】完成時に売上と原価をいくら計上すべきか
【6】未成工事支出金として残す金額はいくらか
逆に、工事台帳がしっかりしてない場合、
未成工事支出金の正確な把握が難しくなります。
材料費や外注費がどの現場に対応するか分からず、
完成工事と未完成工事の区分が曖昧になります。
その結果、決算書の精度が下がってしまい、
現場別の利益管理もできなくなります。
逆に工事台帳での管理がしっかりしていると、
決算・税務申告の精度は大きく向上します。現場工事別に損益管理詳細はこちらから【↓】
【 現場工事別に損益管理する工事台帳 】
未成工事受入金・未成工事支出金は経営で重要
未成工事受入金と未成工事支出金は、
単なる会計処理のためだけの科目ではありません。
経営管理の面でも非常に重要です。
未成工事受入金が多い場合、会社に先に資金が入り、
一見すると資金繰りが良く見えます。
しかし、そのお金は未完成工事に対応するもので、
施工義務があり、自由に使える利益でありません。一方、未成工事支出金が多い場合は、
完成前の工事に多くの原価が投入されていることを意味します。
工事完成後に十分な売上が立てば問題ないですが、
見積りのズレや、追加原価が発生したりすると、
完成時に赤字工事になる可能性があります。
そのため、未成工事支出金の増加は、 資金繰りや利益管理の面でも注意が必要です。
特に建設業では、売上高だけを見ていても
会社の実態は分かりません。
未成工事受入金、未成工事支出金、完成工事高や、
完成工事原価を合わせ<確認することで、
はじめて正しい経営状況を把握できます。
建設業や建築業の資金調達において金融機関は、 未成工事受入金と未成工事支出金を確認します。
なぜなら、これらが適正に処理されていないと、
試算表・決算書が信ぴょう性に欠けるからです。
それだけ建設業や建築業では、未成工事受入金と、未成工事支出金が経営でも重要なのです。
これらの会計処理が適正でないとお金を調達して
利益を増やし社員を幸せにする社長の仕事=経営に
支障が出てしまいますので注意が必要です。
特に建設業は決算書を許可申請でも使います。
だから他事業に比べ精度が求められるのです。
建設業の決算書が重要な理由はこちらから【↓】













